― 4 ― 次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。 次の日一 いち郎 ろうは、 ①あのおかしな子 こ供 どもが、今日からほんとうに学校へ来て本を読んだりするかどうか早く見たいような気がして、いつもより早く嘉 か助 すけをさそいました。ところが嘉助の方は一郎よりもっと ②そう考えていたと見えて、とうにごはんもたべ、ふろしきに ㋐ツツんだ本ももって、家の前へ出て一郎を待っていたのでした。二人は途 と中 ちゅうも A その子のことをはなしながら学校へ来ました。すると運動場には小さな子供らがもう七・八人集まっていて、棒 ぼうかくしをしていましたが、その子はまだ来ていませんでした。また昨日のように教室の中にいるのかと思って中をのぞいて見ましたが、教室の中はしいんとして誰 だれもいず、黒板の上には昨日そうじのとき、ぞうきんでふいたあとがかわいてぼんやり白い縞 しまになっていました。 「昨日のやつまだ来ていないな。」一郎が言いました。「うん。」嘉助も言ってそこらを見まわしました。 一郎はそこで鉄 てつ棒 ぼうの下へ行ってじゃみ上 あがりというやり方で、 ③無理やりに鉄棒の上にのぼり、両 りょう腕 うでを B 寄 よせて右の腕木に行くと、そこへこしかけて、昨日三 さぶ郎 ろうの行った方をじっと見おろして待っていました。谷川はそっちの方へ C 光ってながれて行き、その下の山の上の方では風も吹 ふいているらしく、 D 萱 かやが白く波立っていました。嘉助もやっぱりその柱の下でじっと ④そっちを見て待っていました。ところが二人はそんなに永 ながく待つこともありませんでした。「来たぞ。」と一郎が思わず下にいる嘉助へ叫 さけぼうとしていますと、早くも三郎はどてをぐるっとまわって、 E 正門を入って来ると、「おはよう。」とはっきり言いました。みんなはいっしょにそっちをふり向きました
1
が、一人も ㋑ヘンジをしたものがありませんでした。それはへんじをしないのではなくて、みんなは先生にはいつでも「おはようございます。」というように習っていたのでしたが、おたがいに「おはよう。」なんて言ったことがなかったのに、三郎にそう言われても、一郎や嘉助はあんまり ⑤にわかで、また勢 いきおいがいいので、 F 臆 おくしてしまって、一郎も嘉助も口の中でおはようというかわりに、もにゃもにゃと言ってしまったのでした。 ところが三郎の方は、べつだんそれを苦にする風もなく、二・三歩また前へ進むとじっと立って、そのまっ黒な眼 めでぐるっと運動場じゅうを見まわしました。そしてしばらく誰か遊ぶ相手がないかさがしているようでした。 ⑥けれどもみんなきろきろ三郎の方は見ていても、やはりいそがしそうに棒かくしをしたり、三郎の方へ行くものがありませんでした。三郎はちょっとぐあいが悪いようにそこにつっ立っていましたが、また運動場をもう一度見まわしました。それからぜんたいこの運動場は何間 げんあるかというように、正門から玄 げん関 かんまで大 おお股 またに歩数を数えながら歩きはじめました。一郎は急いで鉄棒をはねおりて、嘉助とならんで ⑦息をこらしてそれを見ていました。(宮 みや沢 ざわ賢 けん治 じ『風の又 また三 さぶ郎 ろう』) 注 1
臆して=気おくれして。おどおどして。 注
2
間 けん=長さの単位。一間は約一・八二メートル。
問一 線㋐・㋑のかたかなを漢字に直しなさい。
㋐
包
㋑返 事
注1
注2
練 習 問 題
5 10
15 20
25 30
35 40
― 5 ―
問二 A~Fにあてはまることばとして適 てき当 とうなものを次から選び、それぞれ記号で答えなさい。(同じものは二度使えません。)ア どんどん イ いろいろ ウ だんだんエ とうとう オ ときどき カ きらきら
A
イ
Bウ
Cカ
D
オ
Eア
Fエ
問三 この文章には、次の一文がぬけています。もとにもどすとすると、どこに入れたらよいですか。この一文のあとに続く文の初めの五字を書きぬきなさい。(句 く読 とう点や記号も字数にふくみます。) それは突 とつ然 ぜん三郎がその下 しも手 てのみちから灰 はい色 いろのかばんを右手にかかえて、走るように出て来たのです。
問四 ――線①「あのおかしな子供」について、次の⑴・⑵に答えなさい。⑴ この子供の名前を答えなさい。
⑵ この子供は、⑴の名前とは別に何と呼 よばれていますか。文中から五字で書きぬきなさい。
問五 ――線②「そう考えていた」の「そう」が指している部分を文中からさがし、その初めと終わりの五字を書きぬきなさい。
「 来 た ぞ 。
三 郎
昨 日 の や つ
初 め
あ の お か し
問六 ――線③「無理やりに」には、一郎のどんな気持ちが表れていますか。適当なものを次から選び、記号で答えなさい。ア どうしても鉄棒が上手になりたい。イ 鉄棒の上にのぼり、みんなにじまんしたい。ウ 三郎が来るまでに鉄棒の練習をしたい。エ 三郎が来るのをどうしても早く見たい。問七 ――線④「そっち」が指す方向を文中から九字で書きぬきなさい。問八 ――線⑤「にわか」の意味として適当なものを次から選び、記号で答えなさい。ア 大声 イ 早口ウ とつ然 エ 元気問九 ――線⑥「けれども……ありませんでした」とありますが、それはなぜですか。適当なものを次から選び、記号で答えなさい。ア 三郎と遊ぶより、自分たちだけで遊んだほうが楽しいから。イ 三郎が乱 らん暴 ぼうそうなので、近づくのが恐 おそろしいから。ウ 三郎と遊びたいのだが、三郎が声をかけてくれないから。エ 三郎のことは気になるが、なんとなく臆してし
ま
うから。問十 ――線⑦「息をこらして」とは、どういう意味ですか。適当なものを次から選び、記号で答えなさい。ア じっと動かずに イ ゆったり落ちついてウ とても不思議そうに エ はっとおどろいて 終わり
早 く 見 た い エ
昨 日 三 郎 の 行 っ た 方
ウ
エ
ア
― 8 ― 次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。 小 こ平 へいさんは、真っ白な ㋐布で、松 まつ吉 きちの首から下を包んでしまいました。手も出ませんでした。 小平さんはどこかから、バリカンを取り出して来ました。バリカンは家のと同じもののように見えました。バリカンがさわったとき、松吉は思わず A をすくめました。このバリカンもかみつくかと思ったのです。 ポロリと白い布の上に落ちて来たものを見ると、かられた、黒い、自分の髪 かみの毛でした。なァんだ、もう、かられているのか、と思いました。ちっとも痛 いたくないではありませんか。( a )松吉は、 ①やっと安心して、 B の力をぬきました。 髪がかられてしまうと、松吉は、これでおしまいだと思いました。家ではいつでも、 ②それだけだったからです。ところがおどろいたことには、腰 こしかけが、キーイとかすかな音を立てて、後ろへたおれていきました。「あッ」と松吉は声をたてました。( b )、腰かけはたおれたのではありませんでした。もたれだけが後ろにのびて、 ③腰かけている人があお向けに寝 ねるようになっただけでした。 天 てん井 じょうの白 しら壁 かべや、キャベツの玉のような形の大きい、すりガラスの電灯を見ていると、とつぜん、顔いちめんに、だッとなにか熱いぬれたものをのせられて、目も見えなくなってしまいました。見ていた杉 すぎ作 さく
が、おかしかったのか、ハハハハ、と笑っています。松吉も笑いたいのですが、顔がふさがっていて笑うことができません。人間は顔で笑 444
う 4のだということがよくわかりました。顔にのせられたのはむしタオ
1
ルでありました。 小平さんは、タオルをのけると、太い筆のようなものでせっけんのあわを松吉の顔にぬり、かみそりで、額 ひたい際 ぎわからそり始めました。 松吉はそのとき、小平さんがまだ子どもで村にいたころ、松吉たちによくいたずらをしたことを、また思い出しました。小平さんはよく後ろから、そっと来て、人の背 せ中 なかへ手を入れたり、わきの下をくすぐったりしました。そして、小さい目を細くしてにやにや笑っていました。 いまも、松吉は、小平さんが、そんな ④いたずらを、始めるのではないか、と C の落ち着かぬ思いでした。ことに小平さんが、松吉の耳をつまんで、二度ばかり、耳の毛をそったときには、松吉は、てっきり、小平さんが、むかしのいたずらを始めた、と思いました。 ⑤もう少しで、クックッと笑いだすところでした。しかし小平さんの顔を見ますと、まじめな顔をしていました。遊び 44をしているのではない、仕 4
事 4をしているおとな 444の顔つきでありました。 松吉には、小平さんがおとな 444になったからもう遊ば 44ないということがわかりました。 ⑥おとなは仕事をするのです。たとえ、人の耳をつまんでそるというような、いたずらみたいなことでも小平さんは、仕事ですから、まじめにするのです。松吉には、おとなになるというのは、ふざけるのをやめて、まじめになる ㋑約束のように思われました。 ⑦なんとなくさみしい感じがしました
。
(新 にい美 み南 なん吉 きち『いぼ』)
問一 線㋐・㋑の漢字の読みを書きなさい。
㋐
ぬ の
㋑や く そ く 練 習 問 題
5 10
15 20
25 30
35 40
― 9 ―
問二 A~Cにあてはまることばとして適 てき当 とうなものを次から選び、それぞれ記号で答えなさい。ア 顔 イ 口 ウ 首エ 鼻 オ 目 カ 耳キ おなか ク 背中 ケ おしりコ 肩 かた
問三 ( )a・bにあてはまることばとして適当なものを次から選び、それぞれ記号で答えなさい。ア また イ しかし ウ しかもエ そこで オ むしろ
問四 ――線①「やっと安心して」とありますが、松吉が安心したのはなぜですか。適当なものを次から選び、記号で答えなさい。ア 小平さんがやりやすいように、動かないでじっとしていた緊 きん
張 ちょう感がほぐれたため。イ バリカンの音が思ったより大きくなくて、ちっともこわくなかったため。ウ バリカンで痛い思いをするかと思ったが、少しも痛くなかったため。エ 鏡にうつった自分の髪の毛のぐあいがかっこよ
く
なってきたため。問五 ――線②「それだけ」の「それ」はどんなことを指していますか。「…で~こと」という形で答えなさい。 A
ウ
Bコ
Cケ
a
エ
bイ
ウ
バ リ カ ン で 髪 を か る こ と
問六 ――線③「腰かけている人」とは、この場合だれのことですか。文中から書きぬきなさい。問七 ――線④「いたずら」とありますが、小平さんがむかし松吉たちにしていたいたずらの内 ない容 ようを、「~こと」につながる形で、文中のことばを使って答えなさい。
こと
問八 ――線⑤「もう少しで、クックッと笑いだすところでした」とありますが、松吉はなぜ笑いだしそうになったのですか。
問九 ――線⑥「おとなは仕事をするのです」とありますが、小平さんの仕事は何ですか。
問十 ――線⑦「なんとなくさみしい感じがしました」とありますが、松吉はどうしてさみしいと感じたのですか。適当なものを次から選び、記号で答えなさい。ア 小平さんと遊び相手としてのつき合いはもうできないから。イ 小平さんは仕事がいそがしく、遊ぶ時間がなくなったから。ウ 小平さんと遠くはなれて、なかなか会えなくなったから。エ 小平さんに髪の毛をかられて、頭の辺りがすっきりしたから。